窓の外 ~後編~
みんなはジミーの死を悲しんだ。
ところが入り口から二番目のベッドに寝ていたトムという男が、
「俺をジミーが寝ていた窓際にやってくれ」と頼むのです。
しかし、看護婦さんたちは顔を曇らせて、なかなか言うことを聞いてくれません。業を煮やしたトムは声を荒げて怒鳴ります。それで仕方なく、看護婦さんたちはトムを窓際に移します。
喜んだトムは、「俺はジミーみたいに外の景色をみんなに話してなんて聞かせないぞ。自分だけで楽しむんだ。」
そう思ってトムは窓の外を覗き込んだ。
ところが窓から見えたのは灰色の古ぼけた壁だけだった。その瞬間トムはジミーの思いがすべてわかった。
「ジミーは壁しか見えないのに自分たちのすさんだ心を励ますために、その壁の向こうに広がっているであろう素晴らしい世界を想像し、ああやって語り聞かせてくれていたんだ。それにひきかえ、自分ときたら自分だけ楽しもうなんて、何と浅ましい心の持ち主だろうか。何という恥ずかしい自分であろうか。」
心から懺悔したトムは、ジミーに負けないくらい、素敵な思いやりをもって、同室のみんなに語り聞かせるようになった。
「おーい、みんな、今日は花屋さんが通るぜ。車の中はたくさんの綺麗な花でいっぱいだ。前のほうにはパンジーがあるな。黄色いバラに、真っ赤なバラ。きっと甘い香りがするだろうな。」
おわり