「無上意」のおもてなし
ある方が、長い間一緒に苦楽をともにしてきた奥様を、
自分の定年前に病気で亡くされました。
奥様の冥福を祈るために、四国八十八ヶ所の巡礼を行いました。
巡礼の最後に立ち寄った高知空港の日本料理店で
ビール一本と、土佐名物カマスの姿寿司を一人前注文したそうです。
加えて、
「申し訳ありませんが、グラスは二つで」
という注文を受けた若い店員は、
不思議に思いながらも
「かしこまりました」
とお客様の指示に従い、まずビールとグラス二つをお出ししました。
するとそのお客様は、
小さな額縁に入れた女性の写真をテーブルの中央に置き、
その前のグラスにビールを注ぎました。
そして、自分のグラスにもビールを注ぎ、静かに乾杯をしました。
店員は、お客様はきっと亡くなった奥様の写真を持って
巡礼をしてきたのだろうと思いました。
そこで、お寿司を運ぶ時、
さりげなくお箸と箸置きを二組、小皿を二枚持って行きました。
つづく・・・